ヘリウムガスの消費量削減に対する取り組みとご提案

ランニングコストの低減や環境負荷への配慮に対する関心は高まっています。ヘリウムガス(He)は貴重な資源であり,少ない使用量で大切に利用することが求められています。ここでは,ヘリウムガス消費量を低減させる機能のご紹介と他のキャリアガスへの変更についての注意点をご説明します。

分析中に消費されるヘリウムガスを節約する(キャリアガスセーブモード)

目的試料の濃度が高い場合,カラムへの導入量を減らす目的でスプリット比を大きくして分析を行いますが,一般的にGC分析では,試料を注入直後に気化してキャリアガスで運ばれるため,分析時間中に大きなスプリット比のままにしておく必要がありません。 
試料注入の後,指定した時間にスプリット比を変更するキャリアガスセーブモードを使用してヘリウムガスの消費を抑制する方法をご紹介します。キャリアガスセーブモードは,Nexis GC-2030,GC-2010 Plus,GC-2025,GC-2014に標準で搭載されています。

連続分析でのキャリアガスセーブモード使用例

キャリアガスセーブモードにより,試料導入後1minでスプリット流量を50mLから5mLに減らしています。 オートインジェクタと併用することにより,分析終了後,翌日分析を開始するまで,スプリット流量をセーブした状態を維持することができます。
1分析当たりのヘリウム消費量を比較すると,下記条件の場合,約78%の消費量削減効果が得られます。
分析時間:30分,スプリット比:50
キャリアガスセーブ機能:1分後にスプリット比5
カラム温度:170℃,カラム:内径0.25mm 長さ30m 膜厚0.25μm

設定方法のご紹介: キャリアガスセーブモードを使用して分析中にスプリット比を変更するには分析終了後もキャリアガスをセーブするには
 

キャリアガスを水素に変更する

GC分析で用いられるキャリアガスとして,ヘリウム,窒素,アルゴンがあります。また,検出器や目的によっては使用できないこともありますが,水素もキャリアガスとして使用できます。島津のガスクロマトグラフ(GC)は,水素キャリアガスに対応しており,水素をGCのキャリアガスとして利用できます。水素ガス(H2)は,ヘリウムガスと比較して入手しやすく,安価であり,線速度に対する分離性能も維持できます。安全面に留意して使用すれば,ランニングコストも大幅に削減することができます。

キャリアガスの種類を変更すると同一条件でも同じ結果が得られるとは限りませんので,分析条件の検討が必要になることがあります。
GCの前処理装置にはキャリアガス以外のガスも使用されており,装置の種類によっては,キャリアガスに水素が使用できない場合もあります。水素キャリアガスを使用できる前処理装置に関しては,弊社担当営業までお問い合わせください。

Nexis GC-2030,GC-2010 Plus,GC-2025,GC-2014 には,キャリアガス自動停止機能が搭載されています。キャリアガス流量制御に電子式フローコントローラ(AFC)が採用されており,カラム入口圧,全流量が一定条件内で設定値に達さない場合には,大量のキャリアガス漏れなどのトラブルが起こっていると判断して,キャリアガス供給を停止し,GCも自動停止します。
Nexis GC-2030,GC-2010 Plus,GC-2025については,検出器ガス流量についても,電子式フローコントローラ(APC)を採用しておりますので,停電時には水素ガスが自動的に停止します。

水素をキャリアガスとして利用する際の特長をまとめました。また,Nexis GC-2030,GC-2010 Plus,GC-2010,GC-2014,GC-2025については,使用に関する検証を行いましたので,その内容をご紹介させていただきます。

  • 注入口の圧力と流量を監視しており,一定時間内に設定値にならなければオーブンの温度を下げたのち,キャリアガスの供給を停止します。
  • キャリアガスの制御異常が発生した場合には,電子フローコントローラーがキャリアガスの供給を自動的に停止します。
  • 島津のGCではオーブン内での水素漏えい実験を行っており,オーブン内に水素が滞留しない構造となっていることを確認しております。水素の拡散係数が大きいため,オーブン内に水素は留まりません。
  • 島津GCでは水素を使用した爆発実験を行っております。通常の使用条件での水素ガス漏れでは,カラムオーブン内で意図的に点火させても軽い爆発音がしますが,その他は何も起こりません。
  • 島津ワークステーションソフトウェア GCsolution,LabSolutions では,水素キャリアの設定が標準で行えるようになっており,キャリアガス線速度一定モードで同一の線速度の条件に設定いただくことで,簡易にメソッド移行検討が行えます。

以下の事項は水素ガスを使用する際に必ず実行してください。

 

一般強制 電子フローコントローラー APC・AFCでガスの供給圧が正常であるにもかかわらずリークエラーが発生するときは,使用を中止して当社に修理を依頼してください。
一般強制 「手動で水素ガス流量を設定する」タイプのガスクロマトグラフで,流量や圧力が通常に比べて極端に大きく(または小さく)なってしまうときには,圧力調整弁部も含めてガス漏れチェックをしてください。
漏れが見つからない,漏れが止まらない,または漏れを止めても正常に戻らないときは,使用を中止して当社に修理を依頼してください。

 

安全な水素供給源 水素ガス発生装置の使用をお勧めします

水素ガス発生装置は,ガスボンベと比較して非常に安全です。水素ガス発生装置を使用すると,危険で高価な水素ボンベが不要になります。

 → 水素ガス発生装置のご紹介

水素ガスを安全に使用していただくために(取扱上の注意)

水素ガスは,爆発しやすい危険なガスです。 ガスクロマトグラフで水素ガスを使用するときに,想定される危険および安全に使用していただくための留意点をまとめました。

 → 水素ガスの安全使用について(取扱上の注意)

なお,ガスクロマトグラフの取扱説明書にも水素ガスについての注意事項が載っていますので,併せてお読みください。
 

キャリアガスを窒素に変更する

窒素ガス(N2)は,安価で安全なガスです。キャピラリGCで使用される場合,ヘリウムと同条件で分析すると,分離能力が低下する場合がほとんどです。近接するピークがない場合,ヘリウムと同条件でキャリアガスを窒素へ変更することが可能ですが,近接する成分が多く,微妙な分離が必要な場合は,窒素ガスでの条件検討が必要になります。
窒素ガスで分離能力を向上させるためには,キャリアガス線速度の検討,温度条件検討が必要になり,分析時間が長くなると予想されます。また,気化の状態,検出器感度も若干変化することが予想され,面積百分率はヘリウムガス使用時のそれと異なる可能性があります。キャリアガスを窒素に変更される場合は,条件検討を充分に行った上での実施をお勧めします。

ヘリウムガスと窒素ガスでの分離の一例

ヘリウムガスと窒素ガスにて線速度を変化させた場合の分離の一例を示します。
ヘリウムガスでは,線速度20~47cm/sの広範囲で分離はほとんど変わりませんが,窒素ガスでは線速度47cm/sの場合,分離が悪化しています。これは,窒素の分離最適線速度がヘリウムより低く,最適線速度範囲がヘリウムより狭いことに起因しています。

設定方法のご紹介

1. キャリアガスセーブモードを使用して分析中にスプリット比を変更するには

試料注入の後,指定した時間にスプリット比を変更するキャリアガスセーブモードを使用して,ヘリウムガスの消費を抑制する方法をご紹介します。

1) メソッドファイルの読込
[GC分析]ウィンドウで,[ファイル]メニューの[メソッドファイルを開く]でメソッドを開きます。 メソッドファイルがない場合は,新規作成してください。

2) キャリアガスセーブモードを設定
[GC分析]ウィンドウの[SPL]タブをクリック (1) し,[試料気化室設定]画面を開きます。
[試料気化室設定]画面にある[詳細...]ボタンをクリック (2) すると,[SPL詳細設定]ダイアログが開きます。
[SPL詳細設定]ダイアログの[キャリアガスセーブ]にチェックをすると (3) ,キャリアガスセーブモードが有効になります。
[スプリット比]にはキャリアガスセーブ時のスプリット比を入力します (4) 。(分析時のスプリット比よりも小さい値を設定してください。)
[時間]には,スプリット比を変更する時間を入力します (4)
スプリット比プログラムが設定されていても,キャリアガスセーブモードが優先しますので,ここで指定した時間以降はキャリアガスセーブモードのスプリット比に固定されます。設定後,[設定]ボタンをクリックします (5)

3) メソッドファイルの保存
メニューバーの[ファイル]をクリックし,[メソッドファイルに名前をつけて保存]を選択します。メソッドファイルに名前を入力し,メソッドファイルを保存します。


2. 分析終了後もキャリアガスをセーブするには

GC本体のガスセーバー機能を設定しておくと,分析が終了した後もキャリアガスをセーブすることができます。キャリアガスセーブモードと合わせてご使用になると,さらにキャリアガスをセーブできます。

オートインジェクタをご使用の場合

1) GC本体の[FUNK]キーを押した画面で「6.環境設定」を選択し,「9.その他環境設定」を選択します。
2) [ガスセーバーAOC連動]を「Yes」に設定します。
※AOCがライン選択されている場合のみ表示されます。この機能はガスセーバーが「ON」で,AOCを使用してバッチ分析を行う場合に機能します。
※GC本体側の「ガスセーバー自動オン(分)」を併せて設定しないでください。

マニュアルインジェクションの場合

1) GC本体の[FUNK]キーを押した画面で「6.環境設定」を選択し,「9.その他環境設定」を選択します。
2) ガスセーバー自動オンで「10~120(分)」を設定します。
※[ガスセーバーAOC連動]を併せて設定しないでください。

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