今回は,FTIRで測定したスペクトルデータの保存と整理,また,大切なデータを失わないためのバックアップについて紹介します。

1. 試料の測定と基本的なデータの保存

 島津FTIRの制御ソフトウェアIRsolutionでは,試料の測定をするときに,データを保存するファイル名を決めるようになっています。IRsolutionの測定画面には,図1のようなデータファイル名を入力するエリアがあります。そこに適当なファイル名を入力して測定を実行すれば,スペクトルはそのファイル名で自動的に保存されます。
 また,横にある「オートインクリメント」をチェックしておくと,次々に測定を実行して新しいスペクトルのデータファイルができても,上書きされないようにファイル名に自動的に連番がつけられるので便利です。

図1. データファイル名の入力

2.データファイルの整理

基本的には前の節のように,適当なファイル名を入力して測定を実行すれば,スペクトルのデータファイルは正しく保存されていきます。しかし,測定したファイルの数が増えてくると,後からデータを閲覧する際に目的のものを探すのが難しくなってきます。
 Windowsの「エクスプローラ」を使用すれば,ファイルの名前をわかりやすいものに後から変更することもできます。ファイル名を選択してマウスを右クリックし,[名前の変更]をクリックしてください。また,フォルダを測定者や試料の種類ごとにいくつか作成して,データファイルをそれぞれのフォルダに移動しておくと,後から探しやすくなります。
 なお,「エクスプローラ」での操作時に,該当ファイルがIRsolutionで開かれている場合は操作ができません。該当ファイルを一旦閉じてから操作を開始する必要があります。

図2. データファイルをフォルダごとに分類する

Tips
「エクスプローラ」を起動するにはWindows XPであれば,スタートメニューから[プログラム]-[アクセサリ]-[エクスプローラ]の順に選択しますが,キーボード操作だけで起動することもできます。最近のキーボードのほとんどについているWindowsキー(キーボード手前の左右にある,「田」の字に似たWindowsロゴマークのキー)を押しながら「E」キーを押すと,エクスプローラを簡単に起動することができます。


 ファイル名やフォルダ名は,自由につけることができますので,わかりやすい名前をつけてください。ただし,Windowsの制限により,半角文字で215文字を越える長さのファイル名は使用できません。  また,これもWindowsの制限により,『¥ / : * ? " < > | 』の各文字をファイル名に含めることもできませんのでご注意ください。

3.データ処理結果名の変更

 上記のように,ファイル名を適当に変更すると,データを後から探すときに便利です。
 ファイル名の変更と同様に,データファイル内のデータの名前を変更することもできます。
 IRsolutionには,スペクトルに対する多くの種類のデータ処理が用意されていて,データ結果は,IRsolutionのデータツリー上で,もとのデータの下にぶら下がった形で表示されますが,処理結果のデータは,そのままでは実行したデータ処理の名前がつけられます。このデータ処理結果の名前は,次のような手順で別のものに変更することができます。データ整理に便利なようにご利用ください。

● データ処理の結果スペクトルを表示画面に表示します。
● 表示されたスペクトル画面上でマウスの右ボタンをクリックする。メニューが図3のように表示されます。

図3 「オブジェクトのプロパティ」メニューコマンド

● メニューから「オブジェクトのプロパティ」を選択してください。

図4 プロパティ画面

● プロパティ画面の「名前」のところにデータ処理結果の名前が表示されています。これはキーボード入力で変更することができますので,適当な名前にしてOKボタンをクリックしてください。

4.データファイルの検索

ファイル名やフォルダの工夫でデータは見やすくなりますが,あまりデータが大量になると,それでもどこにファイルがあるか良く分からなくなることがあります。
そのようなときは,エクスプローラの検索機能を使うと便利なことがあります。エクスプローラのメニューから,[ファイル]-[ローカルディスク]-[検索]を選択すると検索画面が起動します。ここでファイルが変更された日時や名称の一部,サイズやフォルダを指定して検索を実行することができます。

図5 検索画面

Tips
「検索」もWindowsキーで起動することができます。Windowsキーを押しながら「F」キーを押してください。

5.データのバックアップ

バックアップの必要性

 ハードディスク上のデータを,何らかの事故により失わないように,他の記憶メディアにコピーしておくことをバックアップと呼びます。
 測定したスペクトルデータは,普通,パーソナルコンピュータのハードディスク上に保存します。このハードディスク上のデータは,IRsolutionを起動すればいつでも高速に読み込んで表示や印刷,データ処理などに再利用することができて大変便利です。
 このように便利なハードディスクですが,特別な操作なしにいつでもファイルを保存できる状態にあるということは,一方では,うっかり他のデータを上書きするなどの操作ミスにより保存されたデータを失う危険があるということでもあります。また,ケース内で高速に回転するハードディスクには,故障によりデータを全て失うクラッシュの危険がつねにつきまといます。特に何年も使用していると経年変化によりクラッシュの危険は次第に増大します。
 こういった事故によるデータの喪失を防ぐためには,上述のようなバックアップを普段から行なっておくのが最も確実です。大切なデータは定期的に他のディスクなどにバックアップしておくことを強くおすすめします。

バックアップの方法

 データのバックアップというのは,基本的には,パーソナルコンピュータのハードディスク上のデータを,他のディスク等にコピーして安全な場所に保管しておくだけのことです。このとき,ふだんからデータをフォルダごとに分類しておくとコピーの必要のあるデータを探しやすく便利です。
 市販されているバックアップ専用ソフトウェアを使用すると,定期的に起動してバックアップを促したり,前回のバックアップから変更のあったファイルのみコピーして時間を節約するなどの便利な機能が使用できます。
 しかし,通常のバックアップには,Windowsのエクスプローラを使ってコピーを実行するだけでも十分です。また,後で説明する,市販の各種のドライブには,簡単なバックアップソフトウェアが付属していることもよくありますので,そういったものを利用するのも良いでしょう。

バックアップに使用するドライブとメディア

 それではハードディクス上のデータは,どのような種類のディスクにコピーすればよいのでしょうか。いくつかの種類のドライブとメディアを紹介します。

1)フロッピーディスク
 たいていのパーソナルコンピュータにはフロッピーディスクドライブがついているので,データのバックアップにフロッピーディスクを利用することができます。しかし,フロッピーディスクは容量が1.44MB(メガバイト)しかありませんので,IRsolutionで測定したデータは,1枚のフロッピーディスクには数個から多くても数十個しか入りません。また,スピードも遅いため,現在の大容量データのバックアップには力不足です。

2) CD-R/CD-RWなどのCDメディア
 最近のほとんどのパーソナルコンピュータには,CD-Rなどの書き込み可能なドライブが内蔵されています。これらは,一度データを書き込んだら二度と書き換えられないCD-RやCD+R,何度でも書き換えることできるCD-RWやCD+RWのような区別がありますが,容量はどれも650MB程度と比較的大きいため,バックアップに使用するのに適しています。現在使われているWindows XPでは,これらのCDへの書き込み機能を標準でサポートしているので,簡単にデータのバックアップを行うことができます。

3)DVD-R/DVD-RW/DVD-RAMなどのDVDメディア
 CDメディアと同じ大きさのDVDメディアは,最近では映画や音楽を収録するメディアとしておなじみになっていますが,ここでご紹介するのはデータを書き込むことのできるものです。これらも最近のパーソナルコンピュータに最初から内蔵されていることがあり,また外付けタイプのドライブが市販されています。
 容量は4.7GB(ギガバイト)と,CDの7倍近くあるため,多くのデータをバックアップする用途に適しています。DVD-RAMの両面タイプと言われているものは表・裏両方に記録されるため容量は9.4GBとなっています。
 DVD-RAMの中には,ディスクがむき出しにならないようにシャッター付きのケースに格納されるタイプもあります。このタイプはケースの分だけかさばりますが,記録面に人の手などが触れることがないのでデータの保存上はやや安心です。

4)外付けハードディスク
 これまでご紹介したバックアップメディアは,すべてドライブに交換可能なディスクを入れてコピーし,完了したら取り出して保管しておくというものでした。
 それらとは全く異なり,PCに内蔵されているものとは別のハードディスクをバックアップに利用するという方法もあります。
 最近のPCにはほとんどの場合USBインターフェースのコネクタが内蔵されています。このUSBインターフェースを介してPCとデータの保存や読み出しを行うような,外付けタイプのハードディスクが市販されており,必要なときだけPCに接続してデータのバックアップ先として利用することができます。
 ハードディスクであるだけに他のメディアに比べて容量が非常に大きいのが特徴で,バックアップ作業や,本体ディスクの事故の際での回復作業も,途中にディスクの交換をする必要がないため簡単です。
 ただし,ハードディスクですからクラッシュの危険があることは本体ハードディスクと基本的には同じで,常時使用しないことにより軽減されるだけとなります。ふだんは外付けハードディスクにバックアップし,時々他のディスクにも改めてバックアップするなどの工夫も必要です。

Tips
 Windows XPでは,標準でCDへの書き込み機能をサポートしています。書き込み可能なCD-Rなどのディスクをドライブに挿入し,エクスプローラ上の操作でファイルをCDドライブにドラッグするとそのファイルがディスクに追加されます。最後にCDドライブを右クリックしてメニューを表示させ,「これらのファイルをCDに書き込む」項目をクリックしてください。実際の書き込みが実行されます。

バックアップディスクの保管

データをバックアップしたCD-Rなどのディスクは,直射日光や湿気の無い安全な場所に保管するようにしてください。外付けハードディスクの場合は,移送時の衝撃にも十分ご注意ください。