質量分析とのちがい

質量分析によるアミノ酸配列解析での不足点を,エドマン分解が解決します。
質量分析とエドマン分解のコンビが,より精度高く,より多くの配列情報を生み出します。

●質量分析計によるアミノ酸配列分析の特長

1. スループットが高いです。
2.微量のサンプルから結果が得られます。

●エドマン分解によるアミノ酸配列決定法の特長

1.タンパク質のN末端アミノ酸からの逐次同定および均一性の確認に適しています。
2.タンパク質をそのまま分析に供すことができ,長鎖の配列決定も可能です。
3.質量が同一のアミノ酸(ロイシンとイソロイシン)や近いアミノ酸(リジンとグルタミン)も容易に区別・同定できます。
4.データベースに登録されていない未知タンパク質からも同定可能です。 

解析例1)10pmolのタンパク質から「差クロマトグラム」の活用で,20残基以上同定した例

図1:BSA( Bovine Serum albumin) 10pmolの分析例
Cycle1 のみ生クロマトグラム,それ以外は差クロマトグラム

Cycle数は,N末端からの残基数を表します。Cycle1のデータはN末端のPTH-アミノ酸を分析したクロマトグラムで,D(アスパラギン酸)とわかりました。DMPTU及びDPTUはエドマン分解時生じる反応副生成物,またDTT(ジチオスレイトール)は反応試薬中に含まれる還元剤です。
Cycle1以外の2つのデータは「差クロマトグラム」であり,該当するサイクルで得たクロマトグラムから,一つ前のサイクルでのクロマトグラムを差し引いたものです。差クロマトグラムは,反応副生成物やバックグラウンドピークをキャンセルし,特異的に増加したPTH-アミノ酸のピークを明瞭に表示するので,アミノ酸配列同定が容易になります。この結果から本サンプルの15および22残基目はそれぞれ,G(グリシン),L(ロイシン)であるとわかりました。

解析例2)配列中のロイシンとイソロイシンをそれぞれ明瞭に解析した例

図2:ウシミオグロビン50pmolの分析例
Cycle11と21は差クロマトグラム

左のクロマトグラムは,PTH-アミノ酸混合標準品の分析例です。イソロイシンとロイシンは異なる時間に検出されます。
ウシミオグロビンの11残基目はL(ロイシン),21残基目は(I イソロイシン)であり,それぞれ明瞭に解析されました。

(解析例は、イソクラティックシステムによるものです)