ノックアウト動物の遺伝子分析

ノックアウト動物の遺伝子分析

ノックアウト動物とは、標的となる遺伝子をコードする塩基配列の一部を人為的に欠失させた動物です。正常個体と比較することで遺伝子の機能解析を行う場合や、遺伝子欠損に起因する疾患モデル動物として利用されます。

ゲノム編集ツールを用いた遺伝子ノックアウトの確認

CRISPR/CAS、TALENなどのゲノム編集ツールの登場により、塩基配列の欠失や挿入が従来法と比較して簡便に実施できるようになりました。しかし、編集後の確認はDNAシーケンスで行うため、手間とコストがかかる点が課題となっています。
ここでは、標的遺伝子内に生じる欠失や挿入の有無を、DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置 MCE-202 MultiNAを用いて非常に簡便な操作で確認する事例を紹介します。

<分析原理・手法>

ゲノム編集後の個体において、欠失部位を含む領域をPCRで増幅します。そして、下図のように増幅産物を変性⇒再アニールすることで ヘテロ二本鎖 を形成させます。その後、MultiNAで試料の泳動パターンを確認することで、欠失の有無を構造変化によって検出することができます。この方法により、 鎖長差だけでは判別困難な短い欠失の有無を検出 できるという利点があります。

<分析例>

TALENにより導入されたホモ/ヘテロ変異体の同定

TALENにより導入された変異(8bp欠失)を有するメダカ(ヘテロ変異体)の相互交配を行い,産出個体に対する欠失近傍領域のPCRを実施し,MultiNAでヘテロ二本鎖移動度分析を行いました。

分析手法・データご提供:京都大学 農学研究科 木下 政人先生
引用論文:Ansai, S. et al., Biol Open. 2014 Apr 11;3(5):362-71.(CRISPR)
引用論文:Ansai, S. et al., Dev Growth Differ. 2014 Jan;56(1):98-107.(TALEN)



Ampdirectを用いた血液からのラットのジェノタイピング

Ampdirectは、タンパク質や糖といったPCR阻害物質に対する中和作用を有するため、鋳型DNAの精製無しにサンプルから直接PCRやクルードな状態からのPCRが可能となります。ここでは、FTA®カードに塗布したラット血液からAmpdirectとMultiNAを用いた迅速なジェノタイピング例についてご紹介します。

<分析例>

SER(Spontaneously Epileptic Rat)は,重度の欠神様発作と強直性けいれんを発症するヒトてんかんのモデル動物です。SER は京都大学医学研究科附属動物実験施設にて,異なる2つのミュータント系統,tremor ラットとzitterラットの遺伝的交雑によって得られたラットで,突然変異遺伝子tremor(tm)とzitter(Zi)を共にホモにもつダブルミュータントです。tmAspa(aspartoacylase)遺伝子を含むゲノム(約200 kbp)の欠失,またziAtrn(attractin)遺伝子の8bp 欠失です。 継代維持は,zi遺伝子をホモにtm遺伝子をヘテロにもつ個体同士の兄妹交配によって維持されています。次世代作出用の親ラットを選抜するためにこれらの欠失を検出することが必須です。 2つの突然変異遺伝子のうちtm突然変異は約200kbという長い領域の欠失であり,その欠失の有無を検出するために2組のプライマーを用いてマルチプレックスPCRを実施します。 1組はwildタイプ検出用であり,その欠失領域にアニールするプライマーを用いて増幅するためその欠失領域がない場合のみPCR産物が得られます。 もう1組のtm遺伝子欠損領域検出用は欠失領域を挟む形でアニールするので,欠失がある場合にのみPCR産物(240bp程度)が得られます。欠損がない場合は約200kbという非常に長い領域を挟み込むためにPCR産物は得られません。  

表にまとめると以下のようになります。

結果
MultiNA による分析(使用キット:DNA-500 プレミックスモード)

サンプルのご提供: 京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設准教授 庫本 高志 先生

MultiNA

DNA/RNA分析用マイクロチップ電気泳動装置

DNAやRNAの核酸サンプルのサイズ(大きさ)確認やおおまかな定量を、迅速かつ簡単に行えるマイクロチップ電気泳動装置です。繰り返し利用可能な高機能マイクロチップにより,アガロースゲル電気泳動法より安価な分析コストを実現しました。しかも,サンプルや分離バッファをセットするだけであとは最大120分析まで無人で自動分析できます。

Ampdirect Plus

遺伝子増幅用試薬 Ampdirect Plus

血液や動植物の組織中には,酵素反応を阻害する物質が多量に存在しています。そのため,PCRなどを利用してDNAを解析するためには,サンプルからDNAを精製する必要があります。
遺伝子増幅用試薬Ampdirect Plus(PCRバッファー)には,サンプル中に含まれるPCR阻害物質の影響を抑制する働きがあり,血液や動植物組織,SDSなどを含む各種サンプルよりDNAを精製することなくPCRを行うことが可能です。

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