危険ドラッグ

危険ドラッグ

危険ドラッグ

最近,「危険ドラッグ」の使用者が,二次的な犯罪(交通事故など)や健康被害を起こす事例が多発し,深刻な社会問題となっています。

「危険ドラッグ」とは,2014年7月以前は〝合法ドラッグ“,〝脱法ドラッグ”などと呼ばれていたもので,規制の有無を問わず,麻薬のような幻覚作用や興奮作用といった症状を引き起こし使用することが危ない物質をさします。

これらは麻薬や覚せい剤の分子構造の一部を別の官能基に置き換え,規制薬物に類似した作用を引き起こすことを目的とした薬物です。
これらの薬物は法規制することによって取締りの対象となりますが,法規制を逃れるために新たな類似構造を持つ薬物が合成され,両者の「いたちごっこ」が繰り返されています。

これらの薬物の同定や定量分析の測定には,GCMSやLCMSが用いられます。
ここでは「危険ドラッグ」の分析例をご紹介します。

分析例のご紹介

1. GCMS:GC-MS/MSを用いたメトキシエチルアンフェタミンの位置異性体の識別

フェネチルアミン類やカチノン類はベンゼン環上の置換基の位置により,3つの位置異性体を持ちます。特定の位置異性体のみ法規制されている薬物もあり,また異なる法律で規制されている場合もあることから,異性体の識別が極めて重要になります。ここでは,フェネチルアミン類の一種であるメトキシエチルアンフェタミン(MEA)の位置異性体(o-,m-,p-異性体)についてGC-MS/MSプロダクトイオンスキャンで解析した例をご紹介します。

GC/MS EI-スキャンのマススペクトル

GC/MS EI-スキャンのマススペクトル

GC-MS/MS EI-プロダクトイオンスキャンのマススペクトル(プリカーサーm/z: 121)

GC-MS/MS EI-プロダクトイオンスキャンのマススペクトル
PMEA(p-メトキシエチルアンフェタミン)の構造式
PMEAの構造式

EI-スキャンのマススペクトルでは,位置異性体間に大きな違いは見られず,マススペクトルでの異性体の識別は困難ですが,m/z121をプリカーサーイオンとしたプロダクトイオンスキャンのマススペクトルでは,位置異性体間で特異性がみられました。GC-MS/MSでは,2段階のフラグメンテーションにより,部分構造を詳細に解析できるため危険ドラッグの分析に効果を発揮します。

K. Zaitsu, H. Miyagawa, Y. Sakamoto, S. Matsuta, K. Tsuboi, H. Nishioka, M. Katagi, T. Sato, M. Tatsuno, H. Tsuchihashi, K. Suzuki, A. Ishii.
Mass spectrometric differentiation of the isomers of mono-methoxyethylamphetamines and mono-methoxydimethylamphetamines by GC–EI–MS–MS. Forensic Toxicology 2013; 31: 292-300.

2. GCMS:GC/MS法薬毒物データベースを用いた全血中薬毒物の分析

昨今の危険ドラッグの取締まりの強化により,薬事法における指定薬物が急速に増加しています。測定対象の薬物が増えることにより,データ解析も労力を要するようになります。GC/MS法薬毒物データベースは,薬毒物の保持指標,特徴的なm/z,定量/確認イオン比およびマススペクトルが登録されており,登録されている薬毒物のデータ解析を簡単に行えます。ここでは,GC/MS法薬毒物データベースを用いた全血中薬毒物の分析例をご紹介します。

全血抽出試料のトータルイオンカレントクロマトグラム (TIC)

全血抽出試料のトータルイオンカレントクロマトグラム (TIC)

GC/MS法薬毒物データベースを用いることにより,カチノン類の1種であるペンテドロンを同定することができました。トータルイオンカレントクロマトグラムでは,ピークとして検出されなかったり,試料由来の夾雑物と重なっていても,特徴的なm/zのマスクロマトグラムから薬毒物を同定することができます。

  詳細はこちら
  → GC/MS法薬毒物データベース

3. LCMS:高速プリカーサーイオンスキャンを用いた脱法ハーブ中合成カンナビノイドの検出

合成カンナビノイドは共通のプロダクトイオンやニュートラルロスがあるため,これを利用して,プリカーサーイオンスキャンあるいはニュートラルロススキャンによってデザイナードラッグを検出することが可能です。ここでは,合成カンナビノイドを超高速プリカーサーイオンスキャンを利用した合成カンナビノイドの分析例をご紹介します。

ナフトイルインドール骨格を持つ合成カンナビノイドには,共通してm/z155および127のプロダクトイオンが観測されます。これはカルボニル基の両側が開裂することで生じるフラグメントです。これらをプロダクトイオンとするプリカーサーイオンスキャン測定により,抽出された脱法ハーブ製品中の合成カンナビノイドのナフトイルインドール類のスクリーニングを行いました。ピークA(7.5 min)が検出され,プリカーサーイオンスペクトルから,m/z342のプリカーサーイオンの存在が示唆されました。

代表的な3種類の合成カンナビノイドのプロダクトイオンスペクトル
代表的な3種類の合成カンナビノイドのプロダクトイオンスペクトル
トリプル四重極LC/MS/MSを用いた脱法ハーブ中のカンナビノイド検出例
K2スパイスというカンナビノイド製品についての3種類のプリカーサーイオンスキャンクロマトグラム
ピークA(7.5 min)は合成カンナビノイドに帰属されました。

  詳細はこちら
  → 高速プリカーサーイオンスキャンを用いた脱法ハーブ中合成カンナビノイドの検出(テクニカルレポート C146-2096)

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