マルチプロファイリング(多変量解析)

~プロファイリングと混合系定量を可能とする多変量解析~

食品中の農薬分析など,一般的な分析化学アプローチでは,対象成分が既知でその化合物自体の性状などを知る目的で分析がなされてきました。
一方,たとえば,ある化学的評価を行う際,多成分相互の影響が問題になる場合があります。
また,メタボロミクスによるバイオマーカ探索,産地判別等では,多成分の量の増減が重要となります。
このような複雑な混合系から目的物の量を求めたり,特徴的な成分を探索するにはプロファイリング(多変量解析)が威力を発揮します。
島津では,多彩な分析機種を駆使して広範なプロファイリングを強力に支援いたします。

マルチプロファイリングとは

プロファイリング(多変量解析)は,分類手法と定量手法に大きく分けられます。分類手法は,医学,ライフサイエンス分野で有効な成分を見つけ出す網羅的解析に用いられ,定量手法は,主に農業や化学など混合系における有効成分の定量に利用されています。

■プロファイリングを利用した各種解析

網羅的解析 分類・特徴把握
メタボロミクス
茶葉のおいしさの原因解明
電池電解液劣化の原因物質特定
添加剤分析
 
におい分析
錠剤イメージング
劣化診断
品質比較
 
分類手法 
目的成分の定量
果物の糖度・熟度予測
魚類の脂肪分測定
不飽和脂肪酸の定量
茶葉の順位予測
油脂の水酸基価の測定
 
定量手法 

マルチプロファイリングソリューション

プロファイリングに関するカタログやアプリケーションをダウンロードいただけます。

分野 カタログ・アプリケーション 装置
食品・製薬・
医学・化学
カタログ
「違いを見分ける科学」 -多変量解析による分析事例-
UV,FTIR,ICP,LC,LCMS,GCMS,
ラマン,FF(におい識別装置)
診断 アプリケーション
GC/MSを用いた血中代謝物プロファイリングによる膵臓がんの新規診断法
GCMS
食品 GC, GCMS
食品 UV
食品 UV
食品 アプリケーション (会員制サイト)
ビール類の分光分析と多変量解析を用いた分類
UV
食品 アプリケーション (会員制サイト)
市販ミネラルウォーターのスペクトル測定とそれらの混合試料の重回帰定量分析
UV
食品 アプリケーション
GC/MSを用いた緑茶葉中代謝物のプロファイリング
GCMS
食品 アプリケーション (会員制サイト)
レギュラーコーヒーのにおいの分析と評価
FF(におい識別装置)
食品 アプリケーション (会員制サイト)
スライスハムのにおい分析と評価
FF(におい識別装置)
化学
アプリケーション
LCMS
化学 アプリケーション (会員制サイト)
NIR-PLSを用いたポリプロピレングリコールの水酸基価の分析
FTIR
化学 アプリケーション (会員制サイト)
NIR加熱透過セルとPLS法を用いたよう素価測定
FTIR
ライフ
サイエンス
アプリケーション
LC/MS を用いたメタボリック・プロファイリング法の応用
— 農産物の生体調節機能の評価 —
LCMS
ライフ
サイエンス
アプリケーション
LC/MSおよびGC/MSを用いたメタボローム解析手法の応用 緑茶葉のプロファイリング解析
LCMS, GCMS

マルチプロファイリングの例

ビール種別分析にむけたにおい物質/味物質分析の統合検討

多種多様な商品を簡単に分類したり,自社・他社製品の比較や改良製品の評価結果を可視化したい場合,単一分析装置のデータでは限定された特性の化合物情報が得られるのみです。
異機種での測定データを結合(統合)することで,多数のサンプルをより明瞭にグラフ上で分類することが可能となります。

今回,ビール中のにおい物質となりうる揮発性化合物をGC/MSで測定し,また味物質となる極性化合物をLC/MSで測定します。両結果を多変量解析で結合することにより,ビールの総合的な評価が可能になりました。

揮発成分を網羅的に HS-GC/MSによる揮発性成分の測定

ヘッドスペースGC/MSを用いて市販のビール類12種(ビール4種,発泡酒4種,ノンアルコールビール4種)の揮発成分を分析しました。
エステル類,アルコール類などにおいに関連する30程度の成分が同定されました。

EIライブラリより30成分を同定した

EIライブラリより30成分を同定した

極性成分を網羅的に LC/MSによる極性成分の測定

LCMS-IT-TOFを用いてGC/MSと同じビール類12種を分析しました。ESI正負イオン同時測定により数百のピークを同定しました。正イオンではプリン体,アミノ酸,ポリフェノールを,負イオンでは有機酸を検出しました。

精密質量より検出成分を同定

マルチプロファイリングによるビールの種別分析

■LC/MS, GC/MS + 主成分分析(PCA)
GC/MS, LC/MSのデータに対し多変量解析の主成分分析(PCA)を適用し,ビール類の分類を試みました。


スコアプロットにおいてビール,発泡酒,ノンアルコールビールが分別できました。
第一主成分(横軸)は麦芽の量で,また第二主成分(縦軸)は糖質の量で説明できます。

ローディングプロットではスコアプロットの各軸に寄与する成分とその程度が示されます。各点は検出成分(m/z_RTペア)を示します。原点からの方向が試料の特徴に対応しています。



GC/MS検出成分を青で,LC/MSの正イオン成分を赤,負イオン成分を黄緑で示しました。このローディングプロットとスコアプロットを合わせて見ることで「ビールではエタノールやクエン酸が多い」などの情報が得られます。

まとめ

ビールの揮発性成分と極性成分を結合したデータに主成分分析を適用することで,多種類のビールを分別することができました。
多機種データを結合するマルチプロファイリングは,製品開発の有効なツールになると考えられます。

 

網羅的解析の例

■血中代謝物プロファイリング(メタボロミクス)による膵臓がんの新規診断法

膵臓がん患者と健常人のメタボロームデータのスコアプロット
膵臓がん患者と健常人のメタボロームデータのスコアプロット

膵臓がん患者と健常者の血清からそれぞれ抽出した代謝物をガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)で網羅的に測定し,代謝成分データベースを用いて同定を行い,得られた結果に対し多変量解析を行った結果,膵臓がん患者と健常者のグループを分けることができました。
本結果は,新規のガン診断の可能性を示唆しています。

健常人群()とがん患者群(●)がグループ分けできました

データご提供:神戸大学大学院医学研究科 吉田優先生
使用装置:GCMS-QP2010 Plus

■色素増感型太陽電池電解液の劣化解析

太陽電池の電解液の経時的な組成変化は,電池の性能や寿命に影響します。不純物を含む多成分の中から劣化に関する成分だけを選び出せれば,劣化原因の特定に効果を発揮します。
ハイブリッド型液体クロマトグラフ質量分析計(LCMS-IT-TOF)を用いると,未知成分の構造推定が容易に行え,電解液の劣化指標となる成分の候補を見出すことができます。

(サンプルご提供:東京大学先端科学技術研究センター 瀬川浩司先生,内田聡先生)

■日本茶の品質管理

日本茶の品質を確認するため,ガスクロマトグラフ質量分析計により採取した膨大な数の成分ピーク情報からお茶のグレードにより変化する複数成分をプロファイリングしました。多変量解析の主成分分析(PCA)を用いると,このように膨大な情報から,有効な成分を瞬時に見つけ出すことができます。プロファイリングはこれ以外にも創薬やライフサイエンスの分野で効果を発揮しています。

網羅的解析の例

(謝辞 本研究は,大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻 福崎英一郎先生,馬場健史先生にご協力をいただきました)

分類・特徴把握の例

■ミネラルウォータの飲みやすさの解析

官能評価,分析装置(イオンクロマトとICP),多変量解析を組み合わせ,ミネラルウォーターの飲みやすさの要因を解析しました。

イオンクロマトの結果
この中からCl-,NO3-,SO42-を選択。
ICPの結果
この中からCa,K,Mg,Na,Siを選択。
主成分分析(PCA)の結果(2)
主成分分析(PCA)の結果(2)

スコアプロットで右上から左下に向かうにつれ,飲みにくくなる傾向がありました。
飲みやすい水はケイ素Siが多く,飲みにくい水はカルシウムCa,マグネシウムMg,硫酸イオンSO42-が多いことが,推測されました。

■緑茶の分類

におい識別装置FF-2020

緑茶はその種類によって香りが異なります。従来このような官能値を科学的指標で数値化することは困難でしたが,最新のにおい分類技術とプロファイリング手法により可能となりました。
以下は,におい識別装置(FF-2020)により日本茶の香りを,強さと質で分類した例です。種類別にグラフ上に分布していることがわかります。

~においの強さ,質の視点から~

■アルコールの分類

市販のビール,発泡酒それにノンアルコールビールの種別を紫外分光光度計によるUVスペクトルをもとに判別した例です。
主成分分析(PCA)を用いると,多数試料を特徴軸ごとに分類することができ,これにより商品の違いを視覚的に把握することができます。

分類・特徴把握の例

目的成分の定量への利用

■果実の成熟度判定

果物の糖度や成熟度測定,米の食味測定など,多成分混合系における特定成分や目的物の定量など,数々の応用が可能です。
以下は,室温に放置したリンゴの劣化度を紫外可視分光光度計により得られたクロロフィル量から算定し,そのリンゴの放置日数を予測するPLSモデルを作成した例です。

実際の経過日数 PLS法による検証用データに
対する予測結果
0 -0.66
7 7.33
14 15.26
21 21.72
28 30.32
35 35.19
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